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杉原紙

 外はチラチラと雪が舞っています。東北から北陸にかけては大雪の予報も出されていて、近畿地方も北部では積雪となりそうです。

 今シーズン、当地ではまだ積雪はありません。例年、2月の声を聞く時期なら僅かであっても二三度は積雪があるのですが、有り難いことにここまでは見逃してくれているようです。

 

 凍てつくようなこの時期を選んで当地で行われているのが、和紙『杉原紙』づくりです。

 町内から集められた材料の楮(こうぞ)の木を桶で蒸し、剥いだ皮を足で踏みほぐした後、外皮を取り去ってから川で晒します。この凍りつくような冷たい水や風が、より白く美しい繊維にするための必須条件となります。

 さらに釜で煮てチリやゴミなどの不純物を取り去ってから叩き、トロロアオイという植物の根から採った粘液を加えて紙漉きとなります。

 この和紙はしおりや便箋、封筒から、大判の書道用紙、絵画用用紙など、さまざまな加工品に変化して売店でも売られています。さらには紙漉き体験ができる工房もあり、昨年当宿を利用して下さったヨーロッパからのお客様もとても喜んでくれました。

 

 ちなみに、幹線道路である国道427号線から当宿方向に入るとき目印となる町立杉原谷小学校では、卒業証書にこの杉原紙が使われています。毎年6年生になると杉原紙研究所の職員に教えてもらいながら、校章の透かしが入った卒業証書になる用紙を漉いて作っています。まぎれもなく唯一無二の卒業証書になるわけです。

 当地もご多分に漏れず人口減少が続いているため、この小学校も行く行くはどこかと統合され、廃校となっていくでしょう。それでも、地元に残る極めて貴重な文化であり工芸品である『杉原紙』を、どうにかして使い続けて欲しいと思います。

画像はすべて2025年1月30日に撮影したものです。